大ちゃん先生こと、高橋 大貴です。
国税庁より、平成29年9月22日付で「広大地の評価について改正を行う」という法令解釈通達が出されました。
これにより、平成29年(今年)の12月31日までの相続・贈与には、現行の広大地評価が適用されますが、平成30年(来年)の1月1日以降の相続・贈与からは、新たな広大地評価(地積規模の大きな宅地の評価)が適用されることとなります。
その土地の状況によって、新たな広大地評価になると、評価が上がることもあれば、下がることもあると予想されています。
広大地に該当するのではないかと思われる土地をお持ちの方は、今年(現行法)のうちに、評価がどう変わるのかを専門家に相談しておくべきです。評価が上がるようであれば、現行法のうちに次世代に贈与をするかどうかを、年内に決めなければなりません。今年もあと約1ケ月しかありません。時間があと少ししかないのです。
【 現行法の「広大地」とは? 】
現行法では、広大地とは、「その地域における標準的な宅地の面積に比して著しく地積が広大な宅地で・・・開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるもの・・・中高層の集合住宅等などの敷地用地に適しているものは除く」と定められています。(評価基本通達24-4 ※一部抜粋)
しかし、どういう場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるのか? マンション適地であるかどうかはどのように判断するのか、などの判断基準が明確ではなく、判定が難しいと言われていました。
【 新たな「広大地(地積規模の大きな宅地)」とは? 】
新法では下記のように、明確に定められる予定です。(新設:財産評価通達20-2(案))
① 500㎡以上の地積の宅地(三大都市圏以外の地域においては1,000㎡以上)
② 次の(1)から(3)までのいずれかに該当するものを除く。
(1) 市街化調整区域に所在する宅地
※ 都市計画法に規定する開発行為を行うことができる区域を除く)
(2) 都市計画法に規定する「工業専用地域」に所在する宅地
(3) 容積率400%(東京都23区は300%)以上の地域に所在する宅地
※ 容積率=建築基準法 第52条 第1項に規定する建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合
③ 普通商業・併用住宅地区及び普通住宅地区として定められた地域に所在
【 新広大地評価になると、評価が上がると予想されているケース 】
様々なケースがありますが、代表的な「評価が上がることが予想されるケース」を二つほど例としてあげます。
A 中小工場地区内の土地:
現行法では、要件を満たせば広大地評価が可能でした。
しかし、新法では、明確に「普通商業・併用住宅地区及び普通住宅地区として定められた地域」
に限定されたため、適用できないと考えられます。
B 基準容積率が300%未満の土地:
現行法では、容積率300%以上の土地には広大地は適用できませんが、
指定容積率(建築基準法 第52条第1項)が300%でも、
基準容積率(建築基準法 第52条第2項)が
300%未満であれば、広大地評価ができる可能性がありました。
しかし、新法では明確に「容積率400%(東京都23区は300%)以上の地域に所在する
宅地は除く」および「容積率とは建築基準法 第52条第1項=指定容積率」と定められたため、
三大都市圏においては、基準容積率が300%未満であっても、指定容積率が
300%であれば適用できないと考えられます。
【 広大地?と思われる土地をお持ちの方は、年内に専門家へ! 】
今回のこのコラムを読んで「もしかしたらあの土地が「広大地にあたるのでは・・・?」と不安になった方は、できるだけ早く「相続税に詳しい専門家」に相談をしてください。今年もあと残すところ約1ケ月、法改正まで残された時間はもうわずかしかありません。
評価が大幅に上がるようであれば、現行法のうちに急いで贈与するかどうか、および「相続時精算課税制度」の利用をするかどうかを併せて検討することになります。相続時精算課税の制度とは、原則として60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。贈与財産の相続税評価額から、2500万円までの特別控除があります。この期限が平成29年12月31日までです。年内に検討し判断する必要があります。
また、「相続税に詳しい専門家」というと「税理士」が思い浮かぶ方が多いと思いますが、相続税に強い税理士は数少ないのが実情です。特に、広大地の評価については、相続税だけではなく不動産の知識も必要であるため、ノウハウを持っている税理士はごく少数です。
当社では、「相続に強い税理士」といつもチームを組んで、相続相談に対応しています。必要な際は、いつでも当社にご相談ください。